一昔前までは育毛といえば、育毛剤か育毛サロンか、というメージでした。
しかし今では育毛サロンでできることは、ほとんど自宅でできてしまいます。
育毛サロンは効果的な選択肢か?
薄毛に悩む人は一度は育毛サロンを検討したことがあると思います。
私も10年以上前に、とある育毛サロンの体験コースを受けて、本気で考えたことがあります。
費用が高額でしたが、学生だったのでお金がありません。親に相談しましたが、「(私の薄毛の状態が)気にするほどでもない」と判断されて、契約するにはいたりませんでした。
今から考えてみればそれで正解だったわけですが、知識の乏しい当時は「高い対価を払えば、薄毛は解決できるのではないか?」と考えていたようです。
育毛に関する知識をある程度持っている今では、「本当に効果はあるのか」「効果に対して費用は適切か」ということを考えざるを得ません。
正直にいえば育毛サロンは費用に見合う効果が期待できないと考えています。
現在でも育毛サロンの費用は高額ですが、今ではわざわざ育毛サロンで高いお金を払わなくても同じことが自分でできると思うからです。
情報がクローズされている昔とは違う
男性型脱毛症(AGA)のメカニズムなどが明らかになっていない昔では、薄毛を克服しようとしても一般人にはどうすれば髪が生えるのかということはわかりませんでした。
そこで、「発毛させます」「発毛の実績があります」という育毛サロンを試してみることになります。誰も「こういう理由で薄毛になって、こうすればそれを克服できる」とはっきりとしてことは言えない状況なので、「実績がある」というだけでも信じてみたくなるというわけです。
しかし、現在では男性型脱毛症(AGA)のメカニズムはある程度解明されていて、それに対する効果的な医薬品も出てきています。
こうした状況では、育毛の選択肢としての育毛サロンの優位性は大きく揺らいでいます。
このように考えれば、育毛サロンの高額な費用は「薄毛と発毛のメカニズムが解明されていない状況」で「独自の育毛理論と技術」を持っている(と消費者に信じられている)ことに裏打ちされていた、ということになります。
かつては育毛に関して育毛サロンの持っている情報(理論、実績、技術)は希少性がありましたが、現在ではそうではないということです。
育毛業界以外の進歩で育毛サロンの独自性が揺らぐ
医学以外の面での進歩も、育毛サロンの独自性を損なう状況を生んでいます。
現代では技術の進歩により、それまで高額な費用が必要だったものが、より安価にできるようになっています。
そうした技術を利用すれば、育毛サロンでしかできないと思っていたことが、自宅でもできるようになるのです。
マイクロスコープで頭皮診断
育毛サロンの体験コースでは、必ずといっていいほど自分の頭皮をマイクロスコープで見せられるはずです。
それで「自分の頭皮はいかに皮脂が多いか」「(育毛サロンの)施術後ではいかに皮脂が除去されるか」ということをデモンストレーションされるわけです。
昔はマイクロスコープで自分の頭皮を見る機会などはそうそうないので、それだけでも育毛サロンは価値がありました。
しかし今では数千円でマイクロスコープを購入することができます。
私も5千円ほどでマイクロスコープを購入して、自分で頭皮の状態を観察して、写真にとって記録しています。
頭皮マッサージ
頭皮マッサージ自体を売りにしている育毛サロンは少ないでしょうが、「皮脂の除去」「育毛成分の浸透」「血行の促進」などの施術とセットでほとんどの育毛サロンでは行われています。
自分でも気軽にできることから一番身近な育毛法といってもいい頭皮マッサージですが、医学的には頭皮マッサージの育毛効果は実証されていません。
しかし、プロのマッサージは気持ちがよくて、「効果がありそうだ」と思わず感じてしまいます。
それでも最近では「ヘッドスパ」という名前で頭皮マッサージのみのサービスを受けることが可能になりました。専用のサロンのほかにも美容室でもやっていますね。
費用は高くても数千円ですので、育毛サロンの費用総額(数十万〜数百万円)と比べると割安です。
頭皮クレンジング
育毛サロンは「皮脂が薄毛の原因」だとして、施術で皮脂の除去を行う傾向がありますが、医学的には今のところ「皮脂が薄毛の原因」説には根拠がないと考えられています。
また頭皮クレンジングで使われるクレンジング剤は、シャンプーと同様に主な洗浄成分は界面活性剤なので、かえって頭皮にダメージを与える可能性があります。
自宅でできる代替案としては、シャンプー前にオイルを塗って皮脂を浮かび上がらせる「オイルクレンジング」がありますが、ホットタブならシャンプーもオイルも使わずに頭皮の老廃物を適度に取り除くことができます。
ホットタブのコストは、初期費用が約1万円、月々のランニングコストが約三千円です。この費用で毎日ヘッドスパが自宅でできると考えれば、かなりお得です。
育毛剤はリアップを基準に
育毛サロンでは独自の育毛剤を販売していて、費用の総額にはそれらの金額が含まれていることがほとんどです。
しかし、育毛剤に関しては日本皮膚科学会が制定した「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」という医学的な基準があるので、こちらに従う方が賢明でしょう。
「男性型脱毛症診療ガイドライン」によれば、外用(頭皮に塗るタイプ)の育毛剤で最も推奨されるのはミノキシジル配合のリアップになります。
「男性型脱毛症診療ガイドライン」で男性に推奨されているミノキシジル5%濃度の育毛剤であるリアップX5プラスの価格は1本(1ヶ月分)税込7,611円です。1年間の費用は約9万円になります。
リアップはかぶれなどの副作用が出る可能性がありますが、効果の実証性を考えれば、費用対効果の面でも育毛サロンを試す前にリアップを試してみる価値はあるでしょう。
カウンセリングは自分で
もしかすると、育毛サロンが提供するサービスの中で実際の施術よりもカウンセリングが一番効果があるかもしれません。
育毛サロンのコースを契約すると定期的にサロンを訪れて施術を受けると同時に、カウンセリングで現在の状況や方針を確認されます。
数十万〜数百万円という高い費用を払うわけですから、皆さん積極的に通うはずです。
その結果、数ヶ月〜数年単位で一定の育毛法を実践する強制力が生まれます。
どのような育毛剤や施術でも、それなりの効果があると考えれば、数ヶ月以上地道に継続すれば効果が出る可能性が高まります。
しかし、数ヶ月育毛を継続するためだけであれば、数十万円の費用は高すぎます。本来なら「育毛を継続するための強制力」ではなく「育毛の効果の度合い」にお金をかけたいものです。
数ヶ月育毛を継続するだけなら、数十万円もかけなくても工夫次第でできるはずです。
そもそも育毛剤を始めとするほとんどの育毛法は、開始から効果が現れるまで半年は必要になります。そうした育毛に関する知識を前提として持っていれば、継続することを前提として育毛を始められるはずです。
また頭皮の状態を定期的に写真に撮ることもおすすめです。少しでも改善すればモチベ—ションアップにつながります。特にマイクロスコープで見ると、肉眼で見るよりも小さな変化に気づくことができて、より早い時期に変化に気づくことができるのでおすすめです。
同じ費用を出すなら育毛クリニックを検討
このように育毛サロンで提供されるサービスは、高い費用を払わなくても自分でできることが多いのです。
また現在では、同じ程度の費用を払って同じように定期的にカウンセリングと施術を受けるのなら、育毛クリニックのほうが高い効果を期待できます。
育毛クリニックでは、プロペシアやミノキシジル外用剤を処方してもらう他にも、PRP療法のような施術的な療法を受けることも可能です。
プロペシアとミノキシジル外用は「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」で最高の推奨度を与えられているので、国内でこれ以上効果を医学的に実証されている育毛剤はありません。
PRP療法などの新しい療法も、それなりの効果が認められています。
費用の面でも、プロペシアとミノキシジル外用のみであれば、診察料も含めて月2万円もしないでしょう。RPR療法などは数十万円単位の費用がかかりますが、オプションとしてプロペシアとミノキシジルの効果をみながら、判断すればいいのです。
お金で髪は買えない?
結局、育毛サロンに高い費用を払うのは「高い費用を払うのだから、効果が出るはずだ」という願望に近いものが根拠になっているように思います。
本来ならば薄毛の状態や体質、生活習慣などによって、効果的な育毛法は違ってくるはずですが、それを吟味・検討する手間を省いて短絡的に「費用が高いほど、効果が高い」と考えてしまっているわけです。
育毛サロンが世の中で最高度の育毛法を提供しているのであれば、それに高い対価が伴うのは当然です。
しかし、医学を中心とした育毛法の進歩は、残念ながら育毛サロンのサービスには反映されていないといっていいでしょう。
そのため、「費用の高さ」を「効果の高さ」を測る尺度にすることなく、育毛法を検討しなければなりません。
育毛を他人任せにしない
育毛サロンに高い費用を払うことは、それに見合うサービスを期待するになりますが、そこには「育毛に関しては育毛サロンに任せたい」という心理もあるように思います。
それは自分で育毛について調べたり、試してみたりするのとは、反対の態度です。
それも選択の1つかもしれませんが、別の記事で紹介したように育毛に成功している人は何かに頼るよりも自分自身で考え実践している人が多いように思います。
育毛サロンに任せてしまった場合、運良く改善すればいいですが、上手くいかない場合は自分で実践していないので、「何がよくなかったのか」ということがわかりにくくなります。
その結果、サロン側から「より高いコース」や「コースの期間を延長すること」を提案されて、効果に確証を持てないものにさらに高い費用を払うことになりかねません。
他人任せにしないことは、不安だったり、失敗することも多いですが、試行錯誤の過程が着実に自分の財産となっていきます。
育毛を真剣に考えるなら「他人任せにするか」「自分自身でするか」をまず考えてみてはどうでしょうか。