育毛剤

育毛剤の効果がでないのは知識不足が原因かもしれない

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育毛剤をつけていても効果が実感できない。

薄毛で悩む人が一度は通る道ではないでしょうか。

育毛剤で効果がでないのは、知識不足で誤った選択をしているからかもしれません。

 

 

育毛剤の効果を示す総合的なデータは少ない

育毛剤を選ぶ際にはできるだけ効果のあるものを選べきだということは、みなさん理解されていることです。

しかし、これがなかなか難しい。

その理由の一つとして「育毛剤の効果はすぐには出ない」ということがあります。

だいたい育毛剤の効果が出るのは半年後です。つまり一度使用する育毛剤を決めたならば、半年はその有効性を検証できないということです。効果がないものを選んだとしてもそれがすぐにはわからないのです。

また、自分に合った育毛剤を選ぶためには、自分の薄毛の原因や体質を把握する必要がありますが、個人でそれを行うのは難しいものです。

通常の病気であれば病院で診察してもらい、症状や体質に合った処方箋を出してもらうことができますが、育毛剤は市販されているものを自分で判断して購入するしかありません。

知識不足が成果がでない原因

しかし、一番の問題は育毛剤を選ぶ客観的なデータが少ないということです。

育毛剤の情報は各販売会社の広告などに頼ることになりますが、当然各販売会社は自社の育毛剤が売れるように広告するので、それらは客観的なデータとは言えません。

これまで、複数の育毛剤を客観的な基準から解説した信頼できるデータはありませんでした。そのためにやみくもに育毛剤を試してみては効果が出ないことに涙した人も多かったことだろうと思います。

ですが、現在では男性型脱毛症(AGA)の研究の進展に伴って、医学的な観点からまとめられた育毛剤のガイドラインが存在します。

それが日本皮膚科学会が2010年に制定した「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」です。

男性型脱毛症診療ガイドラインとは

男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」とは、日本皮膚科学会が毛髪科学研究会と共同して作成した診療ガイドラインです。

ガイドラインは日本皮膚科学会のHPで公開されていて、誰でも閲覧可能です。

ガイドラインを作成したのは、開業医ではなく、主に大学などの研究機関に属する医学博士たちです。

プロペシアやミノキシジルのように男性型脱毛症に有効な医薬品が開発されて、薄毛が病院で治療ができる状況になっても、プロペシアやミノキシジル以外の効果の低い育毛法を続けている人が多数いるので、皮膚科医の立場からするとこの状況を打破したいということが背景としてあるようです。

ガイドラインでは、各育毛法の有効性を主に研究論文をもとに検証し、育毛法ごとに推奨度を決定しています。取り上げられている育毛法は医薬品・市販品の育毛剤と植毛とに大別されます。

ちなみにカツラについては、それ自体が脱毛や発毛に与える影響を検証した研究がないとしていますが、容姿上の問題の改善が期待できて、副作用があったという研究もないことから、特に使用を否定しない、とのことです。

ガイドラインで検証された育毛剤

ガイドラインでは以下の育毛成分(育毛剤)と植毛法が検証されています。

  • ミノキシジル外用液(リアップ)
  • 塩化カルプロニウム(カロヤンシリーズ)
  • t-フラバノン(サクセス、セグレタシリーズ)
  • アデノシン(アデノゲンシリーズ)
  • サイトプリン・ペンタデカン(毛髪力イノベート)
  • セファランチン
  • ケトコナゾール(コラージュフルフルネクストなど)
  • フィナステリド内服(プロペシア)
  • 自毛植毛術
  • 人工毛植毛術

それぞれの育毛剤と植毛法は以下の推奨度でランク付けされています。

A 行うよう強く勧められる
B 行うよう勧められる
C1 行うことを推奨してもよいが、十分な根拠がない
C2 根拠がないので勧められない
D 行わないよう勧められる

それでは各育毛剤の検証を見ていきます。

ミノキシジルの外用(推奨度A)

ミノキシジルの外用液は、ガイドライン上では明言されていませんが、日本では大正製薬からリアップの商品名で発売されています。

ミノキシジル外溶液の推奨度は、男性に対しても女性に対しても最高のAとなっています。

その根拠として、以下のような試験結果を挙げています。

  • 2%濃度と3%濃度のミノキシジルを成人男性に3〜24ヶ月用いた結果、発毛効果が認められ、重篤な副作用はなかった
  • 2%濃度と5%濃度のミノキシジルを成人男性に12〜24ヶ月用いた結果、5%は2%よりも発毛を促進したが、全身的な副作用は生じなかった
  • 1%濃度と5%濃度のミノキシジルを男性に24週用いた結果、5%は1%よりも発毛効果があり、副作用の発現率に差はなかった
  • 1%濃度のミノキシジルを成人女性に24週用いた結果、発毛が促進した
  • 2%濃度のミノキシジルを女性に32週用いた結果、有効性が確認された
  • 2万例以上の男女の症例で、2%ミノキシジルを用いた場合と用いなかった場合の副作用の発生頻度に差はなかった

副作用がまったくないわけではない点が気になりますが、発毛効果があることを示す根拠が十分にあるということで、男性には5%濃度のミノキシジル外溶液が、女性には1%濃度のものが、「外用療法の第一選択薬」として強く推奨されています。

塩化カルプロニウムの外用(推奨度C1)

塩化カルプロニウムはカルプロニウム塩化物とも呼ばれ、「フロジン」の薬品名で円形脱毛症などの治療薬として用いられています。

塩化カルプロニウム単体では以下の試験例を挙げていますが、対象者数が少なく、判定方法も主観的なため、明確な発毛効果は実証されていない、としています。

  • 5%濃度の塩化カルプロニウム外用液を男性に1〜6ヶ月用いた結果、6例中4例で発毛促進か脱毛抑制効果があった
  • 10%濃度と5%濃度の塩化カルプロニウム外用液を男性に2〜6ヶ月用いた結果、それぞれ4例中2例、5例中3例で発毛促進か脱毛抑制効果があった

一方、塩化カルプロニウムに生薬などを配合した育毛剤カロヤンは有効性があるという試験結果があります。

  • カロヤンアボジカを12週間用いた結果、30例中20%に有効以上、60%にやや有効以上の効果があった
  • カロヤンガッシュを24週間用いた結果、86例中男性26.7%・女性54.5%が改善、男性89.3%・女性90.9%が軽度改善した

カロヤンシリーズは第一三共ヘルスケアから販売されている育毛剤です。

カロヤンアポジカは1%濃度の塩化カルプロニウムにカシュウやチクセツニンジンなどの生薬を配合、カロヤンガッシュは2%塩化カルプロニウムに上記の生薬とヒノキチオールなどを配合した育毛剤です。

塩化カルプロニウム自体は円形脱毛症などに用いられる医薬品ですが、男性型脱毛症に効果があるかは実証されていないということでしょう。

ただ、カロヤンシリーズでは効果があったという試験があるので、「外用療法の一つとして推奨する」とされています。

t-フラバノン(推奨度C1)

t-フラバノンは花王が開発した育毛成分です。毛母細胞の分裂を抑制するTGF-βというたんぱく質の活性化を抑制する働きがあるとされています。

t-フラバノンは花王のサクセスシリーズセグレタシリーズの育毛剤に配合されています。

ガイドラインでは以下の試験を挙げて、有効性を示す試験はあるもののその数が少ないとしています。

  • t-フラバノン配合育毛剤を男性に6ヶ月用いた結果、毛髪の直径が増大し、特に新生毛の直径が20%増大した
  • t-フラバノン外用剤を男性に4〜6ヶ月用いた結果、抜け毛が最高20%減少した
  • 男性にt-フラバノン配合育毛剤・市販育毛剤を用いて比較した結果、t-フラバノン配合育毛剤は53.1%、市販育毛剤は34.8%の改善結果を示し、両者とも硬毛が増加した

推奨度はC1で、カロヤン同様「外用療法の一つとして推奨する」ということです。ちなみに女性に対する有効性は不明だそうです。

アデノシン(推奨度C1)

アデノシンは人間のからだに元々備わっている分子で、細胞のエネルギーとなったり、細胞間の情報伝達に関わっていると考えられています。

資生堂によれば、アデノシンは血行促進・発毛促進因子の産生を促進・毛髪の成長期を伸ばす、という3つの点で育毛に効果があるということです。

アデノシンは資生堂のアデノゲンシリーズに配合されています。

ガイドラインではアデノシンの有効性を示した研究は以下の2つのみとしています。

  • アデノシン配合ローションを男性に6ヶ月用いた結果、52名中16名(32%)で軽度改善以上の効果があった
  • アデノシン含有ローションを女性に12ヶ月用いた結果、13名中11名に軽度改善以上の効果があった

t-フラバノン同様、有効性の根拠となる試験が少ないとして推奨度はC1となっていますが、「外用療法の一つとして推奨する」ということです。

サイトプリン・ペンタデカン(推奨度C1)

サイトプリンは合成物質で、植物の細胞分裂を促す効果があります。ライオンによれば発毛を促進させるシグナルを活性化させる働きがあるそうです。

ペンタデカン(ペンタデカン酸グリセリド)は休止期の毛母細胞を活性化して発毛を促す働きがあると見られています。

サイトプリンとペンタカデンはどちらもライオンの毛髪力イノベートに配合されています。

ガイドラインではサイトプリンとペンタデカンに関する試験を1つずつ挙げています。

  • 0.5%濃度のサイトプリン配合の育毛剤を男性に16週間用いた結果、47%が「やや有効」と判定された
  • 2.5%濃度のペンタデカン含有育毛剤を男性に24週間用いた結果、76%で有効性が示された

サイトプリンとペンタデカンも有効性を示す試験数が少ないとされていますが、推奨度はC1で、「外用療法の一つとして推奨」されています。

セファランチン(推奨度C2)

セファランチンはタマサキツヅラフジという植物由来のアルカロイドです。戦前は結核の治療薬として用いられていましたが、現在は円形脱毛症やマムシの毒に対する医薬品として用いられています。

錠剤などの医薬品としてのセファランチンは化研生薬という会社が唯一の製造メーカーになります。

ガイドラインでは以下の報告を挙げていますが、現段階では有効性が実証されていないとして、ガイドライン中雄一の推奨度C2(用いない方がいい)にしています。

  • セファランチンを、フィナステリドとミノキシジルとに併用した結果、約4ヶ月後に増毛効果が認められた

フィナステリドとミノキシジルと併用しているので、単独での効果は実証されていないというのは当然の判断でしょうね。

ケトコナゾール(推奨度C1)

ケトコナゾールは真菌感染症の治療薬で、脂漏性皮膚炎にも用いられます。

脂漏性脱毛症では、頭皮の真菌を抑制することで、毛包の炎症を減少させるようです。

また、男性ホルモンの合成を阻害し、ジヒドロテストステロン(DHT)がアンドロゲン受容体と結合することを防ぐことで、男性型脱毛症(AGA)の改善にも効果があると考えられています。

ケトコナゾールは皮膚科で処方してもらうことが可能ですが、以下のフケ用シャンプーにも配合されています。

ガイドラインでは以下の試験を挙げてケトコナゾールの発毛効果に複数の根拠があるとしています。

  • 2%濃度のケトコナゾール含有ローションを男性に10〜12ヶ月用いた結果、6例中2例に改善が見られた
  • 2%濃度のケトコナゾールローションを男性に6ヶ月用いた結果、脱毛において改善傾向が示された
  • 2%濃度のケトコナゾールシャンプーを男性に6〜15ヶ月用いた結果、成長期毛率と毛髪直径の指数が増加した

推奨度は他の市販の育毛剤と同様にC1ですが、「有効性を示す試験が少ない」というコメントがないので、同じC1の中でも評価は高いように感じます。

また、海外ではケトコナゾールの内服が効果があるという研究もあるようです。

ただし、国内ではケトコナゾールの内服薬は販売されていないので、ガイドラインでの評価は外用に限られています。

フィナステリド内服(推奨度 男性:A、女性:D)

フィナステリドはプロペシアの商品名で処方される内服薬です。

男性型脱毛症(AGA)の原因となるジヒドロテストステロン(DHT)がⅡ型5αーリダクターゼによってテストステロンから変換されるのを阻害する働きがあります。

推奨度は男性に対しては以下の試験を挙げて、ミノキシジル同様最高のAとなっています。

  • 海外の試験8件、国内の試験2件で、フィナステリドの内服は脱毛状態の改善・毛髪数の増加、毛髪重量の増加が証明された
  • 国内試験ではフィナステリド内服を1年間用いた結果、軽度改善以上が58%、何らかの変化が98%に認められた
  • さらに上記試験を2〜3年間継続した結果、2年では軽度改善以上が68%に、3年では78%に増加した

一方、女性に対する推奨度は下記を理由にD(行わないよう勧める)となっています。

  • 更年期以後の女性に対しては無効であった海外の試験が1件ある
  • 妊婦に投与するとジヒドロテストステロン(DHT)の機能低下により、男性胎児の生殖器官などの正常発育に影響を及ぼす可能性がある

副作用については以下のように注意しています。

  • 1年間の服用した結果、2.9%に勃起機能障害・射精障害・精液減少などが出現したが、この出現頻度は服用しなかった場合と変わらない
  • 頻度は不明だが肝機能障害がでることがある
  • 48週間内服した結果、前立腺がんの指標である血清PSA濃度が約50%低下した

副作用はゼロではないので、服用中は医師の診断を仰ぎ、副作用が出た場合は服用を注すればいいというスタンスのようです。

以上のことから、女性に対しては「用いるべきではない」とする一方、男性に対しては「内服療法の第一選択薬として強く推奨」しています。

自毛植毛術(推奨度B)

自毛植毛とは、自分の後頭部の毛包を脱毛部分に移植する外科出術の一種です。

育毛剤のように検証可能な試験はありませんが、以下を理由に推奨度Aのフィナステリドやミノキシジルの次点として「十分な経験と技術を有する医師が行う場合に限り、推奨度Bとして推奨」されています。

  • 世界全体で年間約22万件の実施例が報告されている
  • 移植した毛包の生着率は82.5%以上であるという報告がある

人工毛植毛術(推奨度D)

一方、自毛ではなく人工毛の移植は以下を理由に、推奨度Dとして「使用しないよう勧告」されています。

  • 過去に多くの有害事象の報告がある
  • FDA(アメリカ食品医薬局)では人工毛自体を有害器具として指定しており、人工毛植毛を事実上禁止している

FDAはアメリカの食品や医薬品を取り締まる行政機関です。

市販の育毛剤でも効果はある

以上ガイドラインでの判定を見てきましたが、市販の育毛剤も取り上げられているのは意外でした。

どれもそれなりの試験があるので、取り上げられないわけにはいかなかったのでしょう。

ただ、市販の育毛剤の研究はほとんどが開発メーカーが行っているので、複数の機関が検証しているフィナステリドやミノキシジルと比べると、研究にメーカーの意図が反映されていないかと疑ってしまいます。

しかし、取り上げられたメーカーは自社製品の効果を科学的に検証して、その結果を公表できるレベルにあると考えることもできます。

逆に考えれば、ここで取り上げられていない市販の育毛剤は、そのレベルにはないということです。

育毛剤の効果が出るには半年必要

また、どの試験でも最低3ヶ月は使用期間を設けていたという点も重要です。

やはり育毛剤の効果を検証するには時間がかかるのです。

しかし、多くの試験で3ヶ月〜1年の使用で効果を判定しているということは、それだけ使用して効果が出なければ望みは薄いということでもあります。

だいたい6ヶ月を目安として、効果を検証するのがよいようです。

ガイドラインに沿った育毛法とは

もう一度、ガイドラインで取り上げられた育毛剤を推奨度順に並べてみます。

A
リアップ(ミノキシジル)
プロペシア(フィナステリド)男性に対してのみ
B
自毛植毛術
C1
カロヤンシリーズ(塩化カルプロニウム)
サクセス、セグレタシリーズ(t-フラバノン)
アデノゲンシリーズ(アデノシン)
毛髪力イノベート(サイトプリン、ペンタデカン)
コラージュフルフルネクスト(ケトコナゾール)
C2
セファランチン

やはり医薬品であるリアップとプロペシアを最初に試してみるのがベストになるでしょう。

頭皮に直接塗る外用に限って言えば、リアップをまず半年間試してみて、副作用が出れば推奨度C1のどれかに切り替えるというのが、医学的に見て最も効果的な育毛剤の選択ということになります。

もし、リアップ以外の育毛剤を検討している人がいるのであれば、まずはリアップを試してみるのが医学的には正解ということです。

広告に惑わされてはいけない

医療機関が絶対的に正しいというわけではありませんが、複数の育毛剤の有効性を医学博士が検証している「男性型脱毛症診療ガイドライン」は信頼の置ける基準の一つです。

先にも述べたように、広告などの販売メーカーから情報だけでは客観的に判断することが難しいからです。

特に「髪を生やしたい!」「薄毛の進行をくい止めたい!」という切実な動機で育毛剤を選ぼうとするときは、冷静な判断が難しい心理になっています。

その状態で、客観的な事実ではなく、広告のイメージで育毛剤を選んでしまうと、結果的により効果の高い育毛剤を選びそこなうことになってしまいます。

育毛には、信頼の置けるデータを基準にしていきましょう。

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