薄毛が気になりだすと、誰もがまず最初に育毛剤の使用を検討することになります。
育毛剤は様々な種類が販売されているので、どれを使うのか迷う人も多いと思います。
しかし育毛剤は効能別に4つのタイプに分類することができるのです。
育毛剤の効能別4分類
育毛剤は効能別に以下の4つのタイプに分けることができます。
- 血行促進タイプ
- 毛母細胞活性化タイプ
- 男性ホルモン抑制タイプ
- 頭皮環境改善タイプ
1. 血行促進タイプ
髪の毛は毛穴(毛包)の最深部にある毛母細胞が分裂することで作られます。
出典元:メナード化粧品「用語辞典」
新たな髪の毛を発毛させるにしろ、現状の髪の毛を成長させるにしろ、毛母細胞は髪の毛を作るために栄養が必要になります。
その栄養は毛乳頭の血管に流れる血液から供給されます。
血行促進タイプの育毛剤は、毛乳頭の血液量を増やして、毛母細胞への栄養供給を向上させることで、毛根の代謝を促進させることを目的としています。
2. 毛母細胞活性化タイプ
毛母細胞に直接作用して、その新陳代謝を高めようとするのが毛母細胞活性化タイプの育毛剤です。
血行促進タイプが血液量を増やすことで間接的に毛母細胞の働きを促進させようとするのに対して、このタイプは毛母細胞に直接的に働きかける点で異なります。
3. 男性ホルモン抑制タイプ
男性型脱毛症(AGA)は男性ホルモンの一つであるジヒドロテストステロン(DHT)が原因であるとされていますが、その男性ホルモンの働きを抑制しようとするのが、男性ホルモン抑制タイプの育毛剤です。
外用剤(塗布するタイプ)ではなく内服剤(飲用するタイプ)になりますが、プロペシアも広義ではこのタイプと考えることができるでしょう。
4. 頭皮環境改善タイプ
毛根に直接働きかけず、頭皮の環境を整えることで発毛や育毛を促そうとするのが、頭皮環境改善タイプの育毛剤です。
皮脂の分泌を抑制したり、雑菌の増殖を抑えたりすることを具体的な効能としています。
5.その他のタイプ
多くの育毛剤は上記4つのタイプに分類できますが、それ以外の特殊な効能を持つものもあります。
頭皮の保湿、頭皮を刺激するなどの効能を持つものなどです。
効能別4分類の成分
育毛剤がどんな効能をもっているかは育毛剤の説明文に書かれているはずです。
しかし、育毛剤の成分からもどんな効能をもっているか、どのタイプに分類できるかの見当をつけることができます。
以下では4つの効能別に育毛剤に使用される成分をまとめてみました。
1. 血行促進タイプの成分
- トウガラシチンキ
- ショウキョウチンキ
- センブリエキス
- ニンニクエキス
- ニンジンエキス
- 山椒
- 塩化カルプロニウム
- ミノキシジル
- セファランチン
- ビタミンE
- プチルバニリルエーテル
- ニコチン酸ベンジルエステル
日本ではリアップとして販売されているミノキシジルも血行促進タイプに分類されます。
2. 毛母細胞活性化タイプの成分
- 塩化カルプロニウム
- ベンタデカン酸グリセリド
- アデノシン
- t-フラバノン
- 6-ベンジルアデニン
- ソフォラ抽出エキス
- カミツレ花エキス
- アルニカエエキス
- プラセンターエキス
- D-パンテノール
- エピダーマル・グロースファクター(EGF)
3. 男性ホルモン抑制タイプの成分
- エチニルエストラジオール
- スピロノラクトン
- ジエチルスチルベストロール
- サイプロテロンアセテート
- イソフラボン
- プエラリア
広義ではフィナステリド(プロペシアの薬品名)を含めることができます。
4. 頭皮環境改善タイプ
皮脂腺の活動を抑制する成分
- 塩酸ピリドキシン
- グリチルリチン酸ジカリウム
- レシチン
- 何首烏エキス
- オドリコ草エキス
- 硫黄
雑菌の繁殖を防ぐ成分
- レゾルシン
- ビタミンE
- イソプロピルメチルフェノール
- サリチル酸
- ヒノキチオール
- 白金コロイド
- ジンクピリジオン
目的とメカニズムを知ることが重要
正直なところ、成分を基準にして育毛剤を選ぶ人は少ないのではないでしょうか。
説明や効能を多少読んで、あとは「数千円もするのだから何らかの効果はあるだろう」と価格が効能を保証していると信じて、購入しているのが実際のところだと思います。
しかし、上で挙げたように育毛剤の成分は効能別に異なってきます。
どの成分がどんな面で育毛に効果があるのか、この点を把握しなければ適切な育毛剤を選ぶことはできません。
さらには自分にはどの効能が必要なのか知ることも必要です。
育毛剤を選ぶためには、自分の薄毛の原因も把握することが前提となるのです。
育毛剤は皮膚のバリアを突破できるのか
自分の薄毛の原因を把握して、それに適する成分を配合している育毛剤を選ぶ。
これが理想的な育毛剤選びの手順です。
しかし、育毛法として育毛剤を頭皮に塗布することがいいのか、というそもそもの問題というか選択があります。
「ほとんどの育毛剤は効く」という専門家がいます。
それは半分正しいでしょう。
上で挙げたような成分は何らかの実験で効能が認められているからこそ、育毛剤の成分として選ばれているからです。
しかし、育毛剤の成分自体が効能を持つことと、それを頭皮に塗布する形がベストなのかは別の問題です。
というのも頭皮をはじめとした皮膚は排泄器官であり、成分や栄養を体内に取り込む器官ではないからです。
皮膚の大切な役割は、外部から体内に有害な異物が入らないようにすることです。
そのために皮膚自体が何層もの構造を重ねており、加えて表皮上では皮脂腺から分泌された皮脂で皮脂膜というもう1つのバリアをつくっています。さらには皮膚上で皮膚常在菌をすまわせることで、有害な細菌が皮膚上で繁殖することを防いでいます。
出典元:メナード化粧品「用語辞典」
また皮膚の組織自体にからだの内側から外側へ向かう力が働いています。
たとえば表皮の細胞は、表皮の一番下の基底層でつくられますが、次第に上の層に押し上げられ、最後には角質層から垢となって体外に出ていきます。
髪の毛などの毛髪も同じように皮膚下の毛根から皮膚の外に向かうように伸びています。
皮膚の細胞は基本的に自分自身が内から外に向かうようになっているのです。
頭皮に塗った育毛剤の成分が浸透するというのは、この皮膚の内から外へという基本的な流れに逆らうことになります。
一説には頭皮に塗った育毛剤のうち、浸透するのは全体の20%とも言われています。
また育毛剤が浸透するのは毛包のうちの上部だけで、一番下の毛母細胞付近までの浸透は難しいとも言われています。
皮膚の働きと構造を考えれば、納得できることです。
頭皮を溶かす成分が入っていないか
たとえば毛母細胞を活性化させる成分自体がどんなに高い効能を持っていても、実際に毛母細胞まで浸透しなければ意味がありません。
上の効能別の4分類のうち、頭皮環境改善タイプの育毛剤は特に表皮より下に浸透する必要はありませんが、それ以外の3つのタイプは基本的には表皮より下に浸透しなければ効能は発揮されません。
そこで考えられるのが育毛剤に育毛成分を頭皮に浸透させる成分が入ってはいないかということです。
よく言えば「成分を浸透しやすくするため」となりますが、悪く言えばそれは「皮膚のバリア機能を破壊する」ということになります。
たとえばタンパク質を変性させる両面活性剤がそうした「浸透促進」の成分として使用されている可能性があります。
こうしたことは育毛剤メーカーは声高にいわないでしょうが、注意すべきことです。
価格も効果もリアップが基準
私も育毛剤を試していた時期がありましたが、明確な根拠があって始めたわけではないので、効果が出ないこともあって中断してしまいました。
本格的に育毛について考えるようになると、今まで説明してきたようなことから、私自身は育毛法の選択肢から育毛剤を除いています。
しかし、あえて基準となる育毛剤をあげるとすれば、リアップになるでしょう。
理由は3つあります。
1つ目は効能が医学的に認められていることです。
リアップの成分ミノキシジルは元々は高血圧用の血管拡張剤として開発されていたものですが、後に発毛効果が認められて発毛剤に転用されました。
多くの育毛剤がその効能が医学的に保証されない「化粧品」に分類されるのに対して、リアップは厚生労働大臣の承認を受けた「医薬品」になります。
日本皮膚科学会が制定した「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」でも、ミノキシジルの推奨度はプロペシア(ファナステリド)と同じ最高の「A」となっています。
CQ1 ミノキシジルの外用は有用か?
推奨度:
CQ1.1 男性に対して A
CQ1.2 女性に対して A
推奨文: 男性症例に対して 5% ミノキシジル外用液 を外用療法の第一選択薬として,また女性症例に対し て 1% ミノキシジル外用液を治療の第一選択薬として 用いるべきである.
2つ目の理由は価格です。
育毛剤の価格帯はだいたい1本1,000〜10,000円というところです。
リアップの価格は60mlで税抜5,500円。
用法は1回1ml頭皮への塗布を1日2回とされています。となると60mlはちょうど30日分になります。
1本1万円近くする育毛剤もあるので、1ヶ月5,500円というコストは価格帯としても平均的な部類と考えていいでしょう。
医学的に効能が保証されている育毛剤の価格が、高すぎることもなく育毛剤としては平均的な値段だとすれば、信頼できる材料になるでしょう。
3つ目は成分です。
リアップの成分表には、ミノキシジル・プロピレングリコール・エタノールの3つ成分しか記載されていません。
多くの育毛剤の成分表には10種類以上の成分が記載されているのと比べると驚くべきことです。
リアップには余計な成分が入っておらず、ほとんど成分のほとんどがミノキシジルと言えます。
つまり、「リアップを選択すること」=「自分の薄毛にミノキシジルが効くと考える」というシンプルな図式が成り立つのです。
自分の薄毛にミノキシジルが効くと思えば選択すればよく、ミノキシジルの効果に疑問があれば選択しなければいいというシンプルな判断基準で選ぶことができます。
育毛剤の価格と効能が相関関係にあるのであれば、リアップよりも価格の高い育毛剤はリアップよりも効果が高いはずです。
しかし、「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」の推奨度「A」を得ているリアップ以上に効果が高いと認められる塗布タイプの育毛剤はないといっていいでしょう。
であるならば、リアップより価格が高い育毛剤は価格に見合った効果を期待できないと考えるべきす。
育毛剤を検討するなら、まずはリアップを選択するのが無難でしょう。
効能別に他の育毛法で代替可能
現時点でのベストな育毛剤はリアップになりますが、そのリアップも万能ではありません。
まず、そこそこの頻度で副作用が起こることが報告されています。
販売元の大正製薬によればリアップの副作用発現率は約5%。
【副作用発現率】
リアップX5の副作用発現率8.7%(主な副作用:接触皮膚炎3.3%、湿疹3.3%、脂漏性皮膚炎2.0%)
リアップの副作用発現率5.3%(主な副作用:接触皮膚炎2.0%)
リアップの主な副作用は頭皮の痒みです。これはリアップの成分であるプロピレングリコールに対するアレルギーだと考えられています。
5%という発現率は、20人に1人の割合となり、比較的高い発現率だといえるでしょう。
頭皮に痒みがあるというのは頭皮が炎症を起こしているということですから、仮に副作用が出た場合には使用を中止しなくてはいけません。
このように外用育毛剤の中で最も信頼できるリアップにも、そこそこ高いリスクがあるのです。
もともと頭皮に直接働きかけるという育毛剤の方向性が、体内から体外に向かう皮膚の方向性に逆らうので、育毛剤に多少のリスクが存在するのは無理からぬことです。
そこで育毛剤を使用する目的がはっきりしているのなら、敢えて育毛剤を使わずに他の方法で代替するという選択肢もあり得るわけです。
例えば血行促進タイプの育毛剤を使用する変わりに、半身浴をして全身の血行をよくすることも選ぶことも可能です。
効果の出方に差が出るかも知れませんが、「頭皮の血行をよくする」という方向性は同じです。
以下では育毛剤の4つの効能に対応する代替法の例をあげてみます。
1 血行促進タイプ
- 半身浴
- 運動
- 頭皮のマッサージ
2 毛母細胞活性化タイプ
- 大豆と唐辛子を摂取する
-
大豆と唐辛子で発毛を促す
以前通っていた美容室で薄毛について美容師さんに相談したことがあります。 すると「唐辛子と大豆を食べれば髪は生えるんですけどね〜」と軽い感じで返されました。 そのときは、「そんな簡単なことで髪が生えるか ...
3 男性ホルモン抑制タイプ
- プロペシアを服用する
- ノコギリヤシのサプリを摂取する
4 頭皮環境改善タイプ
- 湯シャンをする(シャンプーをやめる)
-
湯シャンが髪にいいのではなく、シャンプーが髪に悪いだけ
「湯シャンが髪にいい」ということが少しずつ広まっています。 しかし「湯シャンが髪にいい」というよりも「シャンプーが髪に悪い」というほうが正しいような気がします。 「シャンプーが髪に悪い」という意見は非 ...
どの育毛法を選ぶのか、最終的に判断するのは自分自身になりますが、育毛剤を選ぶにしても目的と効能とはっきりとつかんで判断したいですね。