アマゾンでこれまで購入できなかったリアップが購入できるようになりました。
アマゾンでリアップが購入可能に
アマゾンが「第1類医薬品」の販売を始めました。販売する「第1類医薬品」の中にはリアップも含まれています。
これまで「第1類医薬品」をインターネットで販売することは禁止されていましたが、法改正によって2014年から一定の条件付きで販売することが可能になりました。
医薬品には大きく分けて、「医療用医薬品」と「一般用医薬品」の2つがあります。
「医療用医薬品」は医師の処方箋が必要で、薬剤師が常在する薬局でなければ販売できません。
「一般用医薬品」はより一般向けに作られている薬で、「第1類医薬品」「第2類医薬品」「第3類医薬品」の3つに分類されます。「第1類」「第2類」「第3類」の順で副作用のリスクが高く、販売の条件も厳しくなってきます。
「第1類医薬品」は販売時に薬剤師の説明が必要になります。
「第2類医薬品」は販売時の説明が薬剤師に加えて登録販売者でも可とされ、また説明も「義務」ではなく「努力義務」とされています。
「第3類医薬品」は販売時の説明が不要で、法改正以前でもコンビニやネットで販売することが可能でした。
2014年6月から、それまで認められていなかった「第1類医薬品」と「第2類医薬品」のネット販売も可能になっています。
出典元:政府広報オンライン「医薬品のネット販売を安心して利用するために」
ネットで一般医薬品を販売するには、「薬局や許可を受けている実店舗であること」や「薬剤師や登録販売者が常在していること」などの条件があります。
アマゾンはすでに2015年に在庫を持つ実店舗を開設して、「第2類医薬品」と「第3類医薬品」のネット販売を行っていました。
今回、アマゾンはネット上で「第1類医薬品」を購入できる仕組みを構築し、一般用医薬品全般の販売が可能になったのです。
第1類医薬品のネット販売には厳しい条件がある
アマゾンで「第1類医薬品」を購入する流れは以下のようになります。
出典元:ITmediaビジネスオンライン
ネットで「第1類医薬品」を販売する場合でも、実店舗と同様に薬剤師が使用者の状態を確認することが義務づけられています。そのため、注文の際には以下のような入力フォームに自分の状態を入力しなければなりません。
出典元:ITmediaビジネスオンライン
入力情報から薬剤師が適切ではないと判断した場合には、注文が取り消しになる場合もあるそうです。
また、購入者によるレビューや口コミ、レコメンド(推薦)は禁止されているので、アマゾンのリアップのページには「その他のおすすめ商品」や「カスタマーレビュー」は表示されていません。
専門家からの適切な情報提供を確保するための措置のようです。
厳重な規制の背景には高い副作用リスクがある
このようにアマゾンで購入できると言っても「ワンクリック」で手軽に済むわけではありません。
どうしてここまで面倒な手順が必要なのかと言えば、「第1類医薬品」が副作用のリスクが高い医薬品だからです。
副作用のリスクが高いことを知らずに気軽に購入されては、様々なトラブルに発展する可能性があります。
使用者の健康を損なう可能性がありますし、販売側が事前に十分に説明しなかったとしてクレームになる可能性もあります。
実際にリアップは国内で認可されている育毛剤の中では比較的副作用が出やすいものです。販売元の大正製薬の発表では、8.7%の発現率で何らかの副作用が出るということです。
リアップX5(ミノキシジル5%配合)の副作用と発現率
・接触皮膚炎 3.3%
・湿疹 3.3%
・脂漏性皮膚炎 2.0%副作用全体の発現率は8.7%
参照元:大正製薬 ニュースリリース
副作用の発現率が高いのはリアップが粗悪品だからではなく、効果の高い薬の宿命のようなものです。
もともと薬と毒は同一のものだと言われています。人に対する作用が好ましいものであれば「薬」になりますが、悪く作用すれば「毒」になります。
この「いい悪い」はあくまでの人間側の基準なので、どんな薬も毒になる可能性があるというわけです。
薬=毒。これは薬剤師の常識だそうです。
参照記事:効きすぎる育毛剤には副作用がある
リアップの成分であるミノキシジルはもともと高血圧の内服薬として、開発されましたが様々な副作用があるために現在では高血圧の薬としては使用されていません。
そのためミノキシジル内服薬は国内では未承認なのですが、ネット上では「発毛効果が高い」と個人輸入代行という形でかなりの数が販売されているようです。
しかし、購入されている方は「本来の用法である高血圧向けには副作用のリスクが大きすぎて使用されていない」という情報をおそらく知らされずに購入しているのでしょう。当然、いろいろなトラブルが起こることが予想されます。
法律によって「第1類医薬品」のネット販売に様々な規制があるのも、効果の高い薬ほど潜在的に「毒」になる可能性があるからです。医薬品は「薬機法」という法律で製造や流通に厳しい規制がかけられ、安易な使用によって使用者が被害を被ることが予防されていますが、ネット販売で手軽に購入できるようになると、そうした予防措置が十分機能しなくなり、手軽に購入できるようになった反面、副作用の被害も拡大する恐れもあるのです。
利用者の増加で使いやすくなる?
アマゾンで購入可能となったことで、リアップの販売数はこれまで以上になる可能性があります。
すでにリアップシリーズは年間160億円以上の売上をあげています。
リアップシリーズ売上額
2012年 139億円
2013年 156億円 消費税率アップの駆け込み需要
2014年 149億円 前年の反動で減少
2015年 165億円
2016年 169億円(予想)大正製薬HD 決算情報より作成
2013年と2014年には消費税率引き上げの駆け込み需要とその反動がありますが、売上は年ごとに伸びっていっています。
リアップ「シリーズ」の売上なので、ミノキシジルの配合されていないシャンプーやトニックも含まれていますが、ミノキシジル配合の育毛剤の割合を50%としても82億円。
82億円というと、ミノキシジル5%配合のリアップ X5 プラス(年間コスト約9万円)に換算すると91,000人のユーザーがいる計算になります。
アマゾンでの販売開始によってさらに売上が伸びてユーザー数が増えれば、製品の質がより高くなることが期待できます。
先述したようにリアップの副作用発現率は8.7%であると、当の大正製薬が公表しています。ユーザー数が増えるということは、副作用が出る人の絶対数も増えることになるので、メーカーとしてはこの点をおろそかにすることはできないでしょう。
簡単に副作用の発現率を抑えることはできないとは思いますが、なんらかの改善がなされることが期待できます。
また、ユーザー数が増えることで副作用や効果の面での統計的な精度も上がってくるでしょう。
医師に相談することも想定しよう
いずれにしろ、「男性型脱毛症診療ガイドライン(2010 年版)」で最高の推奨度Aと評価されている育毛剤がネット通販大手のアマゾンで購入できるようになったのは画期的なことですが、効果の高い医薬品には副作用リスクがあることをよく理解して、検討する必要があります。
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リアップの副作用発現率は8.7%なので、1割弱の確率で副作用が出て使用できないわけです。
副作用が出た場合はアマゾンでも相談できるでしょうが、やはり実際に症状を専門家に見てもらうに越したことはありません。
ですから、アマゾンでリアップを購入する場合でも、8.7%の確率で皮膚科でケアをしてもらう可能性があることを念頭に置いておくべきでしょう。
薬局などで購入した場合には薬剤師さんと面識ができているので、何かあったときでも相談もしやすいでしょう。
アフターケアを考えると、薬剤師さんと相談しにくい分だけ、アマゾンでのリアップ購入はリスクが高くなっているのです。