リンスやトリートメントは「頭皮につけないように」と注意されますが、その理由をご存知でしょうか。
リンスやトリートメントは頭皮にダメージを与えるのです。
リンスやトリートメントが頭皮を傷つける
リンスやトリートメントの注意書きには必ず「髪のみにつけて頭皮につけてはいけない」と書かれています。
また、美容師さんからもそのようにアドバイスされたという人も多いはず。
というのもリンスやトリートメントは頭皮を傷つける可能性があるからです。
リンスやトリートメントにもシャンプーと同様に、主な成分として界面活性剤が使われています。
界面活性剤がシャンプーに使われているのは、汚れを皮膚から分離させる働きがあるためです。リンスやトリートメントには、界面活性剤の中でもカチオン界面活性剤が使われていますが、これはカチオン界面活性剤が髪の帯電を防止して静電気の発生を抑えて、髪に滑らかさを与えるためです。
しかし、この便利な界面活性剤にはマイナスの特性があります。それが「タンパク変性作用」です。「タンパク変性作用」によって皮膚や頭皮はダメージを受けてしまいます。
界面活性剤には「タンパク変性作用」と呼ばれる性質があり、皮膚のタンパク質を破壊する働きを持っている。慢性的な肌荒れを起こしている人は、ボディシャンプーや台所用の洗剤、または化粧品等によって皮膚のタンパク質を一部破壊されている場合が多い。タンパク変性作用による皮膚への影響としては、アトピー性皮膚炎・手荒れ・湿疹・かぶれ等の一次刺激性接触皮膚炎が挙げられる。
引用元:非接触皮膚科学
例えば、背中にできものがある場合には、背中に流れたシャンプーやトリートメントのタンパク変性作用が原因である可能性が指摘されています。
また、タンパク変性作用は頭皮だけでなく、髪のキューティクルやシチスン結合に及びます。キューティクルがはがれたり、シチスン結合が崩れて髪が損傷する原因にもなるのです。
防腐剤が皮膚常在菌を死滅させる
リンスやトリートメントには界面活性剤以外にも防腐剤が含まれています。
この防腐剤が頭皮の皮膚常在菌にダメージを与える可能性もあります。
頭皮にも皮膚と同様に様々な種類の常在菌がいて、皮膚のバリア機能にとって重要な役割を担っている菌もいます。
特に表皮ブドウ球菌は皮脂をエサにグリセリンや脂肪酸を作り出しますが、グリセリンは皮膚のバリア機能を保つ役割があり、脂肪酸は肌を弱酸性に保つことで悪性の菌類の増殖を防いでいます。
防腐剤によって表皮ブドウ菌などが死滅すると、皮膚のバリア機能が正常に働かなくなります。また頭皮の菌類のバランスが崩れ、悪性の菌類が増殖する可能性があります。
例えば菌類のバランスが崩れた結果、マセアチアが増殖すれば脂漏性皮膚炎になる可能性もあるのです。
カチオン界面活性剤の殺菌作用は強力
リンスやトリートメントに含まれているカチオン界面活性剤も殺菌作用に優れています。
界面活性剤の分子は水と結びつく「親水基」と水になじみにくい「疎水基」の2つの部分から成っていますが、カチオン界面活性剤は水に溶けると親水基がプラスイオンに電離する性質を持っています。
逆に髪は濡れると表面がマイナスイオンを帯びるので、カチオン界面活性剤のプラスイオンに反応してカチオン界面活性剤が髪の表面に結びつきます。これによって髪の表面は静電気が発生しにくくなり、滑らかになります。また、カチオン界面活性剤が髪の表面に吸着する際に、トリートメント成分も吸着されることで、髪の補修も可能になります。
しかし、細菌の表面もマイナスに帯電することが多いため、カチオン界面活性剤は殺菌の働きもしてしまうのです。
このため、リンスやトリートメントの皮膚常在菌に与える弊害も倍増してしまいます。
成分が残りやすい
このようにリンスやトリートメントの成分は頭皮にダメージを与えてしまうのですが、シャンプーと比べてたちが悪いのは、成分が残りやすいという点です。
シャンプーは汚れを落とすことが目的ですから残らずすすぐことが普通ですが、リンスやトリートメントは成分を髪に吸着させて髪を補修することが目的ですから、すすいで成分をすべて洗い流してしまっては意味がないわけです。
元々の使用法が成分を残すようになっているので、残った成分が頭皮についてしまう可能性があります。
たとえ注意して頭皮につけないようしても、すすぎの過程でお湯で流されたリンスやトリートメントは必ず頭皮に流れてしまいます。リンスやトリートメントのすすぎは軽くされるので、頭皮についてしまった分もすすがれずに残ってしまうのです。
シャンプーが悪循環を生む
リンスやトリートメントの成分は頭皮にダメージを与え、しかもすすがれずに残りやすい点はシャンプーよりもたちが悪いです。
このようにデメリットが高いリンスやトリートメントをしなければいけない原因とは一体何でしょうか。
それはシャンプーが皮脂を過剰に取り除いてしまうためだと考えられます。
皮脂が髪の表面をコーディングしている限り、髪は水分が保たれ、滑らかなままです。この状態が保たれれば特にリンスをする必要はありません。
また髪が皮脂でコーディングされていれば、髪がパサつかず、傷むことも少なくなります。つまりトリートメントをする必要もなくなるのです。
髪の長い人にはリンスやトリートメントは必要かもしれませんが、丁寧にブラッシングすることや天然のオイルを毛先につけることで代用できるでしょう。
シャンプーをすると、過剰な皮脂の除去と界面活性剤によるタンパク変性作用、そして皮膚常在菌の除去によって頭皮環境を悪化します。頭皮が荒れると「シャンプーして頭皮を清潔にしなければ!」と再びシャンプーをしてしまうという悪循環を招いています。さらに、髪から皮脂のコーディングを奪うことで、リンスとトリートメントをしなければならなくなり、さらに頭皮のダメージが重なってシャンプーの悪循環が強化されてしまうのです。
シャンプーをしなければ、リンスやトリートメントをする必要もなくなり、頭皮にダメージを与えることも防ぐことができるのです。
皮脂は天然のトリートメント
リンスやトリートメントが担っている働きは、本来すべて頭皮の皮脂が行っているものです。
シャンプーで皮脂を過剰に除去せず、丁寧なブラッシングで髪に行き渡らせてコーディングすれば、髪のうるおいと滑らかさは保たれてリンスは不要になります。そして髪にうるおいと滑らかさが保たれているおかげで、髪が損傷することも少なくなり、トリートメントも不要になります。
リンスやトリートメントが頭皮にダメージを与えることを考えると、なおさらシャンプーすることのリスクは大きいと言えるでしょう。