「とにかく髪が生えてきてほしい!」
頭の薄い人なら誰もが抱いている切実な願いです。
しかし、気持ちの焦りからやみくもに育毛法を選んでしまってはいけません。
育毛には時間がかるからです。
髪が生えるメカニズムを理解するとそのことがよくわかります。
抜け毛の量ではなくヘアサイクルの長さが問題
薄毛が気になりだすと抜け毛の量が気になってきます。
ブラッシング時にくしに絡みつく毛、シャワーのあと風呂場の排水溝に溜まる抜け毛、朝目覚めると枕についている毛。
大量の抜け毛を目にすることは「確実に髪の毛が減っている」という事実を突きつけられているようで大変つらいものです。
しかし、抜け毛の量は男性型脱毛症(AGA)の結果に過ぎません。
抜け毛のみを意識していてはAGAの本質を見誤ってしまう恐れがあります。
AGAの症状は「抜け毛が増える」というよりも「ヘアサイクルが短くなる」と考えた方が理にかなっています。
薄毛でも髪は常に生えてきている
普通、人の頭髪は一定の期間で成長しては脱毛し、また発毛して成長することを繰り返しています。
毛が生え始めて成長が止まるまで成長し続ける期間を「成長期」、毛の成長が止まり毛穴(毛包)が萎縮して浅くなる期間を「退行期」、自然に脱毛してまた新たな毛が生えてくる期間を「休止期」とそれぞれ呼びます。「休止期」の終わりに生えてきた毛は次の「成長期」で成長していきます。
髪の毛はこの3つの期間を循環して発毛・成長・脱毛を繰り返しているのです。
この循環するサイクルのことをヘアサイクルといいます。
薄毛の人の髪でもこのメカニズムは同様で、いくら大量に髪が抜けても必ずそのあとには新しい髪が生えてきます。
ではどうして毛量が減るのかというと、薄毛の人のヘアサイクルでは、
- 成長期が短くなり
- その結果、髪が細くなる(軟毛化する)
ということが起こっているからです。
成長期が短くなると、頭髪が太く成長する前に抜けることになります。
ヘアサイクルが回ってまた新しい毛が生えてきても、その毛が太くなる前に抜けてしまうのです。
髪が薄い人でも頭皮をよくみると細い産毛が生えていることがわかります。
髪の毛が生えていてもその毛が太くなければ、地肌が透けて見えて遠目には髪が生えてないように見えるのです。
こうした細くて確認しづらい毛のことを軟毛といいます。
それに対して髪の毛や他の体毛のようにはっきりと見える太い毛のことを硬毛といいます。
AGAとはヘアサイクルの成長期が短くなることで、硬毛だった髪の毛が軟毛化する症状のことなのです。
休止期の髪には何をしてもムダ
ヘアサイクルのそれぞれの期間の長さは正常な状態で、成長期が5〜7年、退行期が1〜2週間、休止期が3〜4ヶ月だといわれています。
また頭髪の中で成長期にある毛は全体の約85%、退行期にある毛は約1%、休止期にある毛は約10~15%といわれています。
ちなみに髪が生える毛穴(毛包)の数は生まれたときから変化せず、日本人の平均は約10万個ともいわれています。
たとえば赤ちゃんも髪の毛が薄いように見えますが、それは生えている髪が軟毛に近い産毛だからで、この毛が硬毛化して太くなることで髪が生えそろうように見えてくるのです。
AGAの場合、通常であれば5〜7年ある成長期が半分以下の2〜3年になり、さらには数ヶ月になっていきます。
成長期が短くなると髪の毛は発育不良のまま休止期に移り抜けてしまいます。
休止期に入った髪の毛がすぐに抜けてしまうわけではありませんが、その髪は基本的には成長しません。
ですからいくら効果が高い育毛剤をつけたとしても、休止期の髪には効果はなく、その髪は当初の予定通りに抜けるのを待つだけです。
効果が現れるのは今ある髪の毛が抜けて、新しく生えてきた髪の毛の成長期ということになります。
ということは何らかの育毛剤を用いたとしても、成長期の終わった直後の髪の毛(正しくは同じ毛包から生える次の毛)にはその効果が現れるまでに最短で、2週間(退行期の期間)+4ヶ月(休止期の期間)の時間差があるということです。
効果が現れるということは、成長期が延長した結果、髪の毛が脱毛する休止期の時期が伸びるということですので、その髪の毛がそれまで脱毛していた時期にならないとわかりません。
ですから下手をすると効果を実感するためにはヘアサイクルを一周する必要があります。
プロペシアも半年かかる
どんなに効果的な育毛剤をつけても、全体の約10%の休止期の髪はそのまま数ヶ月以内に脱毛する運命なのです。
あとは残り85%の成長期の髪に効くかどうかですが、すべての髪に即時に効果が出るというのは無理でしょう。
毎日投与することで徐々に作用していくはずですが、効果が及ばなければその髪は通常の期間で退行期と休止期に移行して脱毛し、効果が出るチャンスは次の髪がある程度成長するまで待たなければいけません。
このように考えると育毛には時間がかかることが納得されるのではないでしょうか。
高い確率で効くとされているプロペシアでさえもその効果が確認できるのは、服用を開始してから半年〜1年かかるといわれています。
成長期を長くする
ヘアサイクルを理解することで育毛に時間がかかることが理解できます。
さらにヘアサイクルを理解することは「育毛とは具体的にどういうことなのか」を理解することにもつながります。
普通、「薄毛の克服」や「育毛」というと髪の毛が生えること、発毛をイメージするのではないでしょうか。
しかし、先ほど説明したようにどんなに薄毛になってもヘアサイクルが回っている限り、必ず発毛します。
では「育毛」とは何をどうすればいいのかというと、短くなっているヘアサイクルの成長期を長くして、髪の毛を太くしていけばいいのです。
成長期の長い髪が増えていくと2つの面で薄毛の改善につながっていきます。
1つ目は髪が太くなり髪の本数が増えなくても髪が増えたように見えることです。
もう1つは、成長期が長い髪が多くなることで、生えている髪の中で退行期と休止期にある毛の割合が少なくなり、髪が抜けている毛穴の割合が減り、生えている髪の割合が増えることです。
太い髪とは正常なヘアサイクルで生えてきた髪のことになります。
そうした髪はたとえ脱毛しても、ヘアサイクルが正常な限り、また太い髪が生えてくるのです。
こうした髪が増えてくることが薄毛の改善につながっていきます。
その育毛法は半年続けられるか
育毛はヘアサイクルの構造上時間がかかります。
即効的に髪の量を増やす方法はカツラや人工毛の植毛しかありません。
これらの方法は自分の髪を蘇らせることを断念した上で選択しなければいけません。
同じ植毛でも自毛植毛の場合は、移植した自毛の大半はすぐに抜けてしまい、次に生えてくる髪を待たなくてはいけないので、他の育毛法と同じように時間がかかります。
育毛を実践するなら、ヘアサイクルの構造を理解した上で、数ヶ月から1年は続けられる育毛法を選ぶ必要があります。
よく吟味しない育毛法を闇雲に始めてみても、「効果が出るのにどれくらいの日数がかかるのか」ということも把握していないので、効果が出る前にやめてしまう可能性が高くなります。
どんな育毛法でもだいたい半年間を目安に考えるといいでしょう。
すると半年という長い時間を投資するわけですから、あやふやな根拠の育毛法を選ぶことはできません。
始める以上は半年間効果が出なくても続けられる育毛法を選ぶべきなのです。
要は始める前にしっかりと情報収集をして、自分にあっていて、根拠のある育毛法を選ぶことです。